前回、持続的な幸福を求めることにおいての、ネガティブの必要性について触れました。
(前回のブログ:「ネガティブは、人生における絶対悪?必要悪?」
https://nuworks.jp/ja/2019/07/10/positivepsychology-negative/)
私達が持ち合わせているネガティブを、ゼロにする必要はなく、感じ得たネガティブは増幅や減衰させることなく、適切に把握し、行動することが重要です。
とはいえ、ポジティブ感情による好影響が、ネガティブ感情よりもはるかに大きいのも明らかです。
気分を良くするという単純なものだけでなく、視覚野をより的確に働くようにしたり、思考の幅を広げたり、ネガティブによる悪影響にブレーキをかける側面もあるのです。
では私達は、ネガティブよりポジティブを、どれだけ多く持ったらいいのでしょうか。
ポジティブがどのくらい上回れば、その効果を大いに享受できるのでしょうか。
実は、ポジティブとネガティブには黄金比があるとされています。
その比率が実現されている環境では、私達は上昇スパイラルに乗るように、発展・拡張した考えや行動ができるというのです。
その数字は、
「3:1」
ポジティブ:ネガティブ=3:1なのです。
この数字は、バーバラ・フレデリクソンとマルシャル・ロサダにより導き出されました。
私のすすめる処方箋はもっと現実的なものです。ポジティビティとネガティビティの割合を少なくとも「3:1」にするということです。
(バーバラ・フレデリクソン『ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』日本実業者出版, 2010,p62)
この「3:1」という比率がティッピングポイント(転換点)であることが、研究の結果わかっています。ここが下降と上昇の分かれ目だということです。
(バーバラ・フレデリクソン『ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』日本実業者出版, 2010,p62)
ネガティブに対し、ポジティブが3倍も必要だというのは、驚くべき数字かもしれません。
しかし、それほどネガティブは強く濃く、私達に影響し残り得ます。(この作用は、心理学において「ネガティブ・バイアス」と呼ばれます。)
それは、自分の感情や内面が発端となるネガティブもあれば、起こった出来事や他人から感じ取るネガティブもあるでしょう。
3:1という数字は、個人の内面ではもちろんのこと、チームにおける業績(パフォーマンス)にも当てはまる数字なのです。
チーム内における会話や発言、フィードバックなどのすべてのやり取りを記録し、分析すると、高パフォーマンスのチームは最大で6:1の割合を示したのに対し、低パフォーマンスのチームの割合は1:1にも届かず、ネガティブな要素の方が多いのです。
ミスがないように、「おい、あれはやったのか?」と強い調子で確認していませんか。
「なんで、確認しなかったんだ?なんで、やらなかったんだ?」と、原因を問い詰めてばかりいませんか。
仕事を捗らせることよりも、失敗したこと・ミスを起こさないことに着目し、躍起になっていませんか。
では、どうしたら私達は、思考やコミュニケーションにおいて、
「ポジティブ:ネガティブ=3:1」以上にすることが出来るでしょうか。
バーバラ・フレデリクソンによれば、ポジティブ感情とは、
①喜び(Joy)、②感謝(Gratitude)、③安らぎ(Serenity)、④興味(Interest)、⑤希望(Hope)、⑥誇り(Pride)、
⑦愉快(Amusement)、⑧鼓舞(Inspiration)、⑨畏敬(Awe)、⑩愛(Love)
(バーバラ・フレデリクソン『ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』日本実業者出版, 2010,p72)
以上の10の感情であるとしています。
これらの感情を喚起するような行動を、意識的に取れれば、3:1の法則を活用することが出来ます。
たとえば、
- 出社したときに「おはようございます。」と元気に挨拶をする。
- 病欠明けの同僚がいれば、「体調、よくなった?」と声をかけてみる。
- オフィスのコピー機に忘れられた書類があれば、届ける。逆に、届けてもらったなら、感謝の言葉を返す。
- 週末の出来事について、良いことも悪いことも挙げて、雑談で笑い合う。
- ミスをして落ち込んでいる同僚を、普段より奮発したランチに誘ってみる。
- プレゼンに臨むため外出する同僚に、「いってらっしゃい!あれだけ準備したんだから、絶対上手くいくよ。」と激励の言葉とともに、見送る。
etc…
小さな行動に思えるかもしれません。
しかし、この小さな積み重ねこそが重要で、その結果が3:1以上になったとき、私達は上昇スパイラルに乗ることができます。
あなたは今日、周囲にどのような働きかけをしますか。
そして、あなた自身は、どのくらいのポジティブ感情を得ることができるでしょうか。
3:1を実現すべく、大きな発展の小さな一歩を踏み出してみてください。
※参考図書:バーバラ・フレデリクソン『ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』日本実業者出版, 2010
ポジティブ心理学認定プラクショナー/公式ファシリテーター2019
溝上 真璃