前回、いくつかの例を挙げ、幸福度とパフォーマンスについて説明しました。
その効果は年齢や分野に問わず、表れるものでした。
今回は、Management 3.0に関心のある皆さんにとって、
特に気になるであろう「ビジネスにおける効果とその理由」を改めて取り上げます。
欧米での様々な調査によれば、従業員幸福度の高い会社は、
<向上する項目>
・イノベーションとクリエイティビティが3倍
・営業数字が37%向上
・生産性が31%向上
<減少する項目>
・燃え尽き症候群が25%減少
・病気による欠勤日数が66%減少
・離職率が51%低下
以上のような、変化と好影響を経営面で遂げています。
そのため、従業員幸福度に主眼を置き、その向上に努める「CHO=チーフ・ハピネス・オフィサー」という役職をつくる企業も増えています。
幸福度が高い、あるいはポジティブな感情を持つことは、なぜこのような結果を生み出すのでしょうか。
そのことを理解するためには、人間の「ポジティブ感情」と「ネガティブ感情」が古来より、どのような役割を果たしてきたのか、それを知ることが一つの助けになるでしょう。
感情は私達の思考と行動に、下記のような影響を与えるといわれています。
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ネガティブ感情:思考の幅を狭め、行動を限られたものにする。
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ポジティブ感情:新しい考え方への視野を広げ、選択肢を増やし、より創造的に思慮深くする。
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原始の時代、猛獣や自然の脅威と隣り合わせだった私達の祖先は、危険(恐怖=ネガティブ感情)を感じた際、「逃げるか、闘うか」という選択を素早くすることを学習しました。
猛獣と対峙したとき、生き延びるために必要なのは、考え迷うことではなく、選択肢を限定し素早く行動することなのです。
一方、ポジティブ感情は、
脳における視覚野をより的確に情報処理できるようにし、さらにはポジティブ感情に伴って発生する脳内物質により、学習機能を司る部分の活性化を促します。加えて、記憶の定着や脳内伝達に関しても、好影響を及ぼすことがわかっています。
つまり、ポジティブな感情をもつとき、人は多くの情報を取り入れ、記憶し、さらにそこから様々なアイディアを出し、判断することができるのです。
ネガティブ感情もポジティブ感情も、他より秀で生き延びるため、人類の進化の目的に必要不可欠だったのです。
では、ビジネスにおいて考えるとき、
私達はどちらの感情を持てばいいでしょうか。あるいは、どちらの行動を取れるようになりたいでしょうか。
現代における知識経済では、クリエイティブで画期的な方法や問題解決の道を見つけることが、良い結果を残すために求められています。
そのために必要なのは、思考の幅を狭めるネガティブ感情ではなく、選択肢を増やすポジティブ感情であるはずです。
そして、私達が同僚やチームに対して、ポジティブなメッセージを与えるには、どうしたらいいでしょうか。
ToDoに追われ、焦ったりイライラしたり、さらには相手への関心をきちんと示せていなかったりしませんか。
ミスに対して、必要以上に自分を責めたり、他人を責めたりしていませんか。
自分においても他人においても、出来ていないことばかりに目を向けていませんか。
感情は伝播します。
もし、あなたが同僚に、明るさや愛情、穏やかさや温かみを表現したとき、それはあなた自身だけでなく相手にもプラスの作用を生み出します。
それが当たり前になったとき、チームに好循環が生まれるのは、皆さんも想像ができるのではないでしょうか。
ビジネスにおいて、より多くのチャンスを創り出すために、幸福や感情を入口に、仕事に臨んでみてください。
きっと、ハピネス・アドバンテージ(幸福優位)の恩恵を受けられるはずです。
ポジティブ心理学認定プラクショナー/公式ファシリテーター2019
溝上 真璃
(前回記事:https://nuworks.jp/ja/2019/06/03/positivepsychology2/)