今回のインタビューは、マネジメント 3.0 ライセンスファシリテーターである酒井 直央(なお)さんにお話を伺いました。
酒井さん(以下、なおさん)はNuWorksのワークショップの共同ファシリテーターとして長年支えてくださっています。
杉山:なおさん、今日はありがとうございます!
これまでもIKIGAIのワークショップをサポートしていただいたり、子どもの教育やマネジメント 3.0の活用例としてもインタビューをさせていただきましたが、今日は、改めてライセンスファシリテーターになって何が変わりましたか?とファシリテーターを通しての学びについて伺えたらと思います。
まず、なおさんのご職業や職場での役割について教えていただけますか?
酒井さん:ソフトウェア開発に携わっています。
関わっているところによって役割も変わりますが、あるチームでは評価、検証の責任者であったり、あるチームでは開発側の管理だけをやっていたり様々です。
杉山:現場によって自分の役割が変わっているという事でしょうか。
例えば、この現場ではこういう話し方とか振る舞いをしようとか、何か意識していらっしゃることはありますか?
酒井さん:現場で振る舞いを変えるというよりは人やチームによって変えていますね。
マネジメント 3.0もやったことがありますが、チームに一番最初に関わる時は、ムービング・モチベーターは必ずやります。
うちのチームとしては、製品全体の中で、どういう価値を生み出すためにいるチームか、みたいな話をします。そのような話をしていく中で価値についてすごく考えてる人がいる時もありますし、 初めて考える人もいます。メンバーによって、最初から価値について話をするチームもあったり、価値について考える機会を増やすということもしたりしています。
杉山:なるほど。その中でムービング・モチベーターズなどのゲームも紹介したりするわけですね。
マネジメント 3.0と出会ったきっかけ
杉山:少し前のことになりますが、なおさんがマネジメント 3.0を知ったきっかけは何だったのでしょうか?
酒井さん:今もマネジメント 3.0と深く関わらせてもらっていますが、一番最初にこのマネジメント 3.0のワークショップを見つけた理由は、会社側が社外の研修を推進してた時期にやっぱりマネジメントだよなと、検索して見つかったのがきっかけです。
杉山:確かコロナの最中で、ワークショップの開催がオンラインに移行した直後でしたよね。NuWorksとしても大きな転換期でした。
酒井さん:はい。オンラインで受けさせてもらって、鹿嶋さんのパワーと中原さんが共同ファシリテーターで印象に残っていた回でした。
もともと「マネジメント」というキーワードで引っかかって受けに行ったこともあり、困ってたからというわけではなかったため、期待してたものが得られたかというと、そもそも求めていたものがなく受けに行ってしまった感じでした。
ただ、受け終わってすごく感じたのは、自分がずっと大切に思っている「いつ・どこで・誰といても相手に何かプレゼントを渡せる状態である」ということとすごく近い考え方、それに対してのプラクティスを提供してくれたというのはすごく感じていました。
杉山:それらのプラクティスの中で印象深かった点とか、この考え方いいなとか、新しかったとかどんなものがありましたか?
酒井さん:ムービング・モチベーターズですね。
みんなが身構えずに済むんですよね。そこに慣れてきたらデリゲーションポーカーとかすごく強力なツールだと思いましたし、コンピテンシーマトリクスとかも、チームだけじゃなくて、メンバー個々の成長に対して、方向性を揃えるのにすごくいいなと感じましたね。
「伝える」というのは気にして相手とコミュニケーションしてたつもりでしたが、やっぱり認識が違う部分がすごくありました。こういう風になってほしいという「こういう風」が、伝えた側と受け手側と認識が違っていたとか。
そういったギャップを埋めていく、お互いを知る・理解するという部分のプラクティスがすごく多かったと思います。
杉山:先ほど、当時は特に何か困ってることがなかったとおっしゃっていましたが、仕事は順調に行っていて、そこでさらになにかスキルを高めようかなという感じでご参加されたのでしょうか?または、少しチームに課題はあった状態だったのでしょうか?
酒井さん:解消できているというわけではないですが困ってることは2つあります。
1つは、どうしても予測できないものがすごく多い中で数字を予測に載せなきゃいけない時はすごく難しいと感じます。スケジュールの線を引いたり、工数であったり、そういうところの精度を高めるのが自分は苦手で、そこは前も今も課題です。
もう1つは、「スケーリング」って言うんでしょうか。
自分がメンバーとして参加してるようなチームの場合、楽しいチーム作りであったり価値を生み出すチーム作りは比較的色々なアプローチがあるのですが、それを広げていく役割をしてほしいと言われると一気に難しくなります。
メンバーとして入っていないチームに対して効果を出すというのはすごく難しいです。「スケーリング」ということに対してはマネジメント 3.0とか1つの解決策をくれたのではないかと思います。
受講後、変わったこと
杉山:その解決策ということで、受講後、なおさん自身に変わったことはありましたか?
酒井さん:課題が解決できたというところまでは行けていませんが、よかったことがよりよくなるという意味ではすごく変わったかなと思いますね。
もともと自分が持っている「いつ・どこで・誰に対してもプレゼントを渡せる状態でいたい」ことに対して、プレゼントを渡すために相手を知ることに関しては、マネジメント 3.0は有効な考え方だったと思います。
困ったときに何かプラクティスを出すことで、話をするだけでお互いを知ることができます。プラクティスを使う時に、お互いを知るために、会話のきっかけとして使ってるところが大きいです。お互いが知れたら、その先に「なぜこれを使うのか」のWHYがあって、成果が出るようにしたいと思っています。
チームの序盤ってお互いを知らないので、実際に話してみたらそうじゃなかった、ということろを解決するにはすごく有効でした。
コミュニケーションツールとしてのマネジメント 3.0
杉山:ツールとしては何を普段使ってらっしゃいますか
酒井さん:最初はムービング・モチベーターズで、時間があればパーソナルマップですね。
パワフルなツールは他にもあるかも知れないですが、チームができていない状態でまず試してみるにはすごく入れやすいです。
チームの関係性ができてきたら、困りごとがあった時にプラクティスを入れていくという形でもっと効果的に使えるものは他にあります。
一方、困りごとはないけど、最初にチームが全然できあがってないから入れてみようという場合に、ムービング・モチベーターズやパーソナルマップはとても楽でやりやすいです。
杉山:それはオンラインでも対面など、どのような場面で使われていらっしゃいますか?
酒井さん:両方使っていますが、私はオンラインの方が経験が多いですね。
チームは全体だと15〜6人いて、5人のところと6人のところなどで小さいグループでパーソナルマップなどを行っています。
マネジメント 3.0 のカードゲームのおもしろさとは?
杉山:マネジメント 3.0にはたくさんのツールやゲームがありますが、なおさんの一番好きなものは何でしょうか?
酒井さん:ムービング・モチベーターズですね。
杉山:今回のお話の中でも多く登場されている言葉ですもんね。
なおさんは今まで、ムービング・モチベーターズの様々な使い方を考案されてこられたり、スクラムフェス三河でも チャレンジャー募集!やる気スイッチをONにする「ふりかえり」で紹介もされてきたと思いますが、ゲームの内容を開発するおもしろさはどんなところですか?
酒井さん:僕は息子の影響が大きくて、マネジメント 3.0の新しい使い方を考える時は子どもと一緒に考えます。こんなふうにやったら面白いんじゃないかとか色々提案してくれます。小学校4年生なのですが、自分じゃ考えられないようなコメントを言ってくれますね。
1年生の下の子は学校とか教室で振り返り系の話があると、「こういうのがあったよ」と教えてくれます(笑)そこはすごく勉強にもなるし、ワークショップにも取り入れていきたいなと思うような内容だったりします。
振り返りだったりアクティブラーニングについては、小学校の先生と話したらすごくおもしろいだろうなと思っています。たくさんの引き出しを持っていそうな教室の掲示ではありますね。
杉山:すごくわかります!学校っていかに子どもたちに楽しくやってもらうか、たくさんの工夫がされていますよね。
酒井さん:楽しく参加できるって、どうしても大人になって振り返りとかWHYとか、アクションとか重く感じてしまう人も出てきてしまうので、小学生でもスッと入れる楽しいプラクティス、ワーク、振り返りってすごくいいなと思います。
ライセンス ファシリテーターが創発する「問い」
杉山:では、ファシリテーターとしてのなおさんのお話を伺いたいのですが、醍醐味や学びなど教えていただけますか?
または、こんなファシリテーターになりたいというイメージなどありましたらお聞かせください。
酒井さん:相手がもっと気付きであったりとか気づきを得られるような問いを出せるようにしたいです。
杉山:それはなおさんご自身のご経験からもうちょっとこの人にこういう問いを投げられたら良かったなっていう振り返りがあったりとかそういうのもありますか?
酒井さん:ワークショップの中で、参加者に意見を言ってもらった時、そこから何かに気づいて深い話を聞けるようになりたいというのもありますね。問いを出したいけど出せないし、時間オーバーにもなってしまう… その方がもっと気づきを得られるような、またはもっと話したくなるような問いを投げられたらいいなと思いますね。
杉山:参加者のバックグラウンドと課題を一気に読み取って問いを投げるというのは、人数がいればいるほどスキルが求められますよね。
酒井さん:複雑系じゃないですが、人にもよりますし、毎回同じ質問をすればいいというわけではないですしね。
杉山:そうですよね。その人に向けた効果的な問いというのも重要ですよね。
マネジメント 3.0 ファシリテーターの魅力
杉山:ファシリテーターの楽しさはどんなところにありますか?
酒井さん:伝えてる時も楽しいし フィードバックをもらった時に楽しいんですよね。 そのフィードバックがポジティブであってもネガティブであっても。フィードバックをもらえるというのはすごく貴重ですね。
知ってるチームとか日常の仕事の中で、そこまでネガティブフィードバックを渡しに来てくれる人って少ないので、ネガティブにフィードバックを渡してくれる人こそすごく大切にしなきゃいけないなと思います。
ネガティブにフィードバックする人って言ってしまえば得なことってないじゃないですか。でも、全体を良くしようと思って、自分がめんどくさい人と思われてもいいからと言ってくれる場合、それはすごいなと思います。
杉山:私はワークショップ終了後など、なおさんに向けたフィードバックをたくさん読んでいて「優しく受け止めてくれました」とか「質問に真摯に対応してくれました」とか「話しやすい雰囲気をつくってくれました」など、共感 の部分が多い印象ですが、いかがでしょうか?
酒井さん:相手のことを受け止めてもらえたと感じてもらえたのであれば、それはすごく嬉しいですね。もっと何でも受け止めるから言ってくれと思ってしまいますね。
なおさんの今後のビジョン
杉山:最後に、なおさんの今後こうしていきたい、こうなりたいなどのビジョンがあればお聞かせください。
酒井さん:少なくとも自分も自分の周りにいる人たちも、その人のやりたいことがやれるようにお互いがコミュニケーションしたり仕組みを作ったりというのができたらすごくいいんじゃないかなと思っています。
ムービング・モチベーターズのように、やる気スイッチ、つまりモチベーターを探してそれに対してアクションをしますが、もっともっと奥までいったら、たぶん誰もが個人個人でやりたいことって本当にもっとありますよね。
自分だったらファシリテーターとしても学べる場でもあるので、学びたいと思いがあります。学びの場として参加者の話をたくさん聞いたり、何か問いを出してその方が気づきを得て、さらに深い話をしてくれたりして、結果としてその方も気づきを得られて、僕も学びがもらえるといったように、
ワークショップだけでなく、仕事やプライベートの集団、仕事のチームだったとしても、 個々がやりたいことを満たせるように、お互いコミュニケーション取れたりできるような活動ができたらいいなと思っています。
杉山:素敵ですね!
ファシリテーターとしての立場はあるけども自分もその場で学んでいたいという…なおさんは常にラーナー(Leaner 学習者)なのですね。
その場に一体となっている感じでしょうか。それがなおさんのファシリテーションがつくり出す場の魅力なんだなぁと今までを振り返りながら思いました。
なおさんはいつも笑顔で話し方も問いかけも優しいですし、常に参加者と同じ目線に立って共感されている姿が印象的です。
今までのお話を伺いながら、相手の考え方や気持ちを大事にしながらフラットで温かい場を積み上げられていく感じがすごくなおさんらしいなと感じました。
これからもチャレンジを続けながら、ファシリテーターとしてますますワークショップを楽しんでいかれることを願っています。
最後に一言、何か言い残されたことはありますか?
酒井さん:みんなが笑顔になるような毎日を過ごしたいですよね。ワークショップであれ仕事であれ、そう思っています。
杉山:本当ですよね。私も人を元気づけられる人でありたいなと思います。
なおさん、今日はどうもありがとうございました!
ファシリテーターとしても、お仕事の中でも、これからのご活躍をお祈りしております(^^)