先日、株式会社サイバーエージェント(以下、「CA」) アドテクスタジオで開発やマネジメントに携わる西部裕介さん、陶山(すやま)育男さん、山本孔明さんの3名に、Management 3.0 の研修を受けての感想や魅力などをインタビューして来ました。
聞き手は、Management 3.0 ファシリテーターのステファンと、 サポーターの横道稔です。
研修後の変化やManagement 3.0 の特徴などに関して、パート2のブログで進みたいと思います。
パート1はこちらにご覧ください。
Management 3.0 研修後に何か考え方の変化はありましたか?
山本さん:現場で一緒のマネージャーとこの研修を受けたので、何か一緒に施策をやってみた時に「これってManagement 3.0 的じゃないから浸透した、またはしなかったんだよね」という会話がされるようになりました。そういった共通言語ができたことも良かったですし、そういった判断をすることで新しいことの成功確率を高められそうになっているのも良いですね。
今までは Management 2.0 までしか意識できてなくて、その先の 3.0 が理想だよね、という共通認識のもとで次のステップの話ができていますね。
横道さん:陶山さんは研修後すぐに育児休暇にはいられましたが、価値観の変化などはありますか?
陶山さん:研修でも多様性の話をしましたが、多様性に関して自分は寛容な方だと思っていたのですが、全然まだまだだなと思いました。
育児をしていると、社会として多様性に対する寛容さがまだまだ低いなと感じています。休暇前に研修を受けたということもあり、強く痛感しています。
「チームは多様な人を集めて多様なものであっていいし、その方がクリエイティブ」「チームをまとめて動かすというより、多様なまま、複雑なまま動かすという意識でいい」と、研修と育児を通じて考え方が変わりましたね。
一方で、今の会社やチームにはそういった面でとても感謝しています。みんなひとつも悪い顔せず育児休暇に送り出してくださったこと自体もそうですし、今でも定期的にチームでランチを設定していくれていて、休業中も関係性を保てるように配慮してくれているんです。
横道さん:会社制度ではなくチームでそういったことをするのも、とても Management 3.0 的ですよね。
他の手法と比べて、Management 3.0 の特徴は何だと思いますか?
西部さん:今まで私が触れてきた色々な手法では、「いかに仕事を回すか、いかに成果物をうまく出してメンテナンス性も高くて・・・」というだけのような話が多かったです。
Management 3.0 は 「最終的な成果を求めるのであれば、手前のところで Worker Happiness が必要だ」という話で、「いきなり手段に入るのではなく、こういう理念を持ちましょう、こういう理念を実現するためにこういうことをやりましょう」その理念というのは Worker Happiness ですが、そこから変えていこうという感じは印象的ですね。
山本さん:そういった意識が変わることで、結果的にやる行動が変わっていますね。Management 2.0 じゃなくて 3.0 にしていこうという、たったそれだけでもマネジメント手法が良い方向に変わっていきますよね。そこが他のワークショップでは感じたことがなかったですね。
陶山さん:パタンランゲージみたいな、そこだけとってやっても少し前進できるとか、取り入れやすさがありますね。浸透させやすさ、活かしやすいものになってるというのが全体を通しての感想です。
うまく日本の組織にも取り入れやすい形になっているのではないかと感じました。
サイバーエージェントのような企業にとっての今後のチャレンジは何ですか?
陶山さん:そもそも CA の組織力はかなり高い方で、現場裁量についても業界トップクラスだと思ってます。そこをさらに、人事や予算も自分たちで動かすチームがもっともっと増えて、強化させられると面白くなると思っています。
弊社でなくても、市場の早い変化に対応するためにチームを小さくするとか、変化に強いチームを作るというような必要性が高まっていると思うので、そういうところで権限移譲をもっとしていく必要があるかなと思います。
横道さん:CA はこの規模の会社としては信じられないくらい、中央集権的でない形で動いていますよね。
西部さん:そうですね。ただ日本全体としては残念ながらそうでもない面もありますよね。今はエンジニアが売り手市場。人の確保の観点から会社のブランディングで Worker Happiness 的な考え方も広まってきています。その方が幸せになれるのなら、人がそっちに流れていくのは自然な流れかな、と思っています。そういった要因からも Management 3.0 的な在り方は、エンジニアに必須なものとして広がっていく可能性はあります。
横道さん:政府が主導する「働き方改革」は、語尾に「(笑)」がつけられちゃったりしますが、目指す方向はそっちで良いということですね。
西部さん:手段が間違っていて、Management 2.0 の典型例のような (笑)
近年、自分自身が大きく変わったところや課題は何ですか?
西部さん:開発責任者としてもう少しで1年になります。色々思考錯誤してやってきたのですが、難しいなと思うことは、オープンマインドであり続けることですね。メンバー含めても自分も。
プロダクトが立ち上がって時間も立っているので、若干の停滞が出てくるのも事実です。波みたいなのがありますね、調子の良さというか。
何かをやろうとすると保守的になってしまう場面もどうしてもあるので、変わっていくべきなのだという文化をより強くしていくことが課題かなと思ってます。
横道さん:組織はマグロだよ、泳いでないと死ぬよ、って。
西部さん:そうですね(笑)分かってはいるのだけど、新しいことをやるにあたって難しさがあって、そのハードルをいかに下げるか、そういう空気を醸成するにはどうしたら良いかを常に考えていますね。
山本さん:この立場になって1年ぐらいで、今も色々悩んでいる状態なんですが、メンバーが幸せでやりがいを持てているかということを意識するようになりました。
ただ当然組織として事業に貢献する必要があるので「価値観だけを重視して、やりたいことだけやってればいい」という誤解を産んでもいけないので、そこの難しさもあります。
Management 3.0 のように、組織をできるだけフラットにはしたいけど、なかなか簡単に行くものではないので、今はメンバーのみんなと一緒に Management 3.0 の研修を受けて、共通言語で考えられるようになるといいなと思っています。
陶山さん:僕はもともとハードワーカーだったのですが、今は息子に自分のすべてを捧げるくらい気力と体力と時間が必要で、やりたいことが 100% はできない状態です。すきま時間で本を読むとか、細かい時間でできることを探していて、これは職場復帰しても同じだと思っています。
「すべてのエネルギーを仕事に使っていなくても、仕事に情熱はあるんだよ」っていうのは、本当に仕事に 100% 使ってる人からは受け入れられづらい考え方かもしれませんが、「そういう人もいるんだよ」というのを認めるのが多様性だと思っています。
最後に、Management 3.0 研修を周りに薦めたいと思いましたか?
横道さん:ネットプロモータースコア的に評価するとどうですか?
陶山さん:(即答で)10ですね。人生で受けたワークショップのうち、間違いなく3本指に入る、一番と言ってもいい良いワークショップでしたね。一緒に受けたメンバーが素晴らしかったというのもあります。
横道さん:同じ組織内のメンバーで受けるので、すごくハイコンテキストで深い議論ができていましたよね。
山本さん:先程言ったとおり、チームのメンバーと一緒に受けたいぐらいおすすめです。
がんばって本をたくさん読んだとしても、これほどまとまって学べるものってあまりないと思います。うまいところだけ取り出して実践できたりもそうですし。会社のマネジメント研修で取り入れてもいいんじゃない?ってくらい良かったです。
西部さん:今の時代に生きる人であれば、誰が受けても納得できる話だと思いましたし、反対するような要素は無かったですね。過去の成功体験にしがみついているような人には向かないかもしれないですが(笑)
特にソフトエンジニアには、すごくマッチする話だと思うので受けると良いのではと思いますね。
本当に議論のきっかけになりました。ワークショップから半年近く経っていても、これだけまだ話題に上がったりしますしね。
横道さん:みなさんお金もらってんじゃないか、ってくらい良い評価ですね(笑)
ステファン:たくさんの嬉しい言葉ありがとうございます。それではみなさん有意義な時間をありがとうございました!
編集後記
株式会社サイバーエージェント アドテクスタジオでの研修は、参加者の学びに対する貪欲さと、参加者間の信頼関係と、それをベースにした忌憚のない活発な議論が印象的でした。
Management 3.0 をはじめとし、様々な価値観を柔軟に取り入れる組織なのだと思います。エンジニアをはじめとした、様々な職種を募集しており、マネージャー候補の採用も積極的とのことでした。
聞き手
ステファン ニュースペリング
NuWorks合同会社の設立者。Management 3.0ファシリテーター。
横道 稔
Management 3.0 サポーター。アジャイル系 Podcast omoiyari.fm パーソナリティ。